複合機は新品・中古・リースなどの経路から入手できます。購入経路それぞれにメリットがありますが、適切に減価償却するには耐用年数を知っておくことが重要です。
そこで今回の記事では、複合機の耐用年数や減価償却の方法などについてお伝えします。
複合機の耐用年数ってどれくらい?
耐用年数は機械を業務で利用できる年数を示しますが、機器ごとに違いがあるため、国が法によって耐用年数を決めています。
「新品」で購入するか「中古」で購入するかによって、耐用年数は異なりますので本項にて解説いたします。
新品の複合機の耐用年数
新品の複合機の法定耐用年数は、5年と国が定めています。これは、複合機の機械としての価値は5年でなくなることを示します。
耐用年数を設定するのは、決算書に記載しなければならない減価償却費を割り出すためです。減価償却費は、固定資産の取得金額を耐用年数で分割して経費に計上します。もし、60万円の複合機を買った場合には5年かけて減価償却します。法定耐用年数によって減価償却費は増減し、納税額にも違いがでます。
法定耐用年数は税の面から決めたものなので、実際には5年を超えて使用できる複合機もあり、機器の寿命を表すものではありません。
中古の複合機の耐用年数
中古で購入した複合機は、以下のように耐用年数を設定することになります。
中古価格が新品価格の1/2を超える場合は耐用年数は新品と同じとして扱います、複合機の場合は5年になります
中古価格は新品価格の1/2以下の場合 :中古の耐用年数を計算で割り出す
中古の複合機が新品価格の1/2以下の場合は、耐用年数の求め方が2パターンに分かれます。
①中古複合機の経過年数が法定耐用年数(5年)より長い場合
中古複合機の耐用年数=5年×0.2
=1年
中古の耐用年数は短くとも2年とする決まりがあるため、中古複合機の経過年数に関わらず2年となります。
②中古複合機の経過年数が法定耐用年数(5年)以下の場合
中古複合機の耐用年数=5年-中古複合機の使用年数×0.8
中古複合機の経過年数が3年の場合は、以下の計算式になります。
5年-3年×0.8=2.6年
小数点以下は切り捨てるため、2年となります。
複合機の減価償却方法は?
ここからは、複合機の減価償却の方法と購入費の経理上の処理方法を見ていきましょう。
定額法と定率法
減価償却費の求め方には定額法と定率法の2種類あります。
■定額法
定額法は、毎年同じ額の減価償却費を決算書に記載する方法であり、求め方は以下のとおりです。
減価償却費=取得価格×償却率
※取得価格には「購入手数料」も含まれる
※償却率は「0.2」
もし、複合機の取得価格が60万円であったならば、減価償却費を毎年12万ずつ支払うことになります。
ただし、5年目の減価償却費は例外的に「119,999円」です。残りの1円は、減価償却終了後も複合機を使用し続けていることを示すため、あえて減価償却費として計上しません。
■定率法
定率法は、毎年同じ割合で減価償却費を求める方法であり、求め方は以下のとおりです。
減価償却費=未償却金額×償却率ー①
※未償却金額とは取得価格から前事業年度までに減価償却した総額を引いたもの
※償却率は「0.4」
ただし定率法では、「取得価格×償却保証率」で求められる「償却保証額」を基準にして、①の額が多いか少ないかによって、減価償却費の割り出し方が左右されます。
・①の額が償却保証額以上となった年
減価償却費は「未償却金額×償却率」で求める
・①の額が償却保証額に満たない年
減価償却費は「取得価格×改定保証率」で求める
※償却保証率は「0.108」
※改定保証率は「0.5」
減価償却の終了年は、1円を帳簿上に残すように処理しましょう。
値段によって変わる勘定科目
経費計上に使用する勘定科目は、複合機を購入する場合やリース契約する場合、取得価格によって異なります。
■複合機を購入する場合の勘定科目
複合機を購入する際に使用する勘定科目は、取得価格に従って使い分ける必要があります。
<10万円未満の複合機の場合>
「消耗品費」を使い、減価償却不要で経費として計上する
<10万円以上の複合機の場合>
「工具器具部品」を使い、減価償却する
そして、複合機の取得価格が10万円以上になると、処理方法を選択することができます。
<取得価格が10万円以上20万円未満の場合>
「一括償却費」として扱い、3年で1/3ずつ減価償却する
<取得価格が20万円以上30万円未満の場合>
「少額減価償却資産」として扱い、取得年にまとめて損金計上する
<取得価格が30万円以上の場合>
「固定資産」として扱い、取得費用を耐用年数で分割して減価償却する
■複合機をリースする場合の勘定科目
リースは契約期間中に途中解約ができない「ファイナンスリース」とそれ以外の「オペレーティングリース」があります。
ファイナンスリースの勘定科目は「リース料」です。ファイナンスリースは、さらに2つに分けられます。
・所有権移転ファイナンスリース
リースのレンタル場合は賃借料となるので減価償却は不要です、リースは期間の途中で契約の解除が出来ません。
レンタルは解除が可能な為、短期間の利用が中心です。
・所有権移転外ファイナンスリース
リース期間終了後はリース会社に複合機を返す
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンスリースは取得時に「リース資産」、支払時に「リース負債」を使います。
一方、オペレーティングリースの勘定科目は「賃借料」です。
しかし、中小企業は「消耗品費」で処理できる場合があります。リース期間が1年以内、1つのリース契約の総額が 300万円以下の場合です。
複合機を処分するならどうすればいい?
複合機を買い替える際は、現在使用している機器を処分しなければなりません。帳簿上の処理と現物の処分方法を解説します。
複合機を処分するなら「除却処理」
「除却処理」は、複合機の使用を止めるのに伴い、帳簿から除くことです。複合機を処分したのに除却処理をせずにいると、償却資産税を支払わなくてはなりません。
また、減価償却が終わり、故障して使用していなかった複合機でも、処分時には除却処理しましょう。
複合機の主な処分のパターン
複合機の処分に関する注意点は2つあります。
- 基本的に企業の所在地域の粗大ゴミに出すことはできないこと
- リース契約している複合機は、契約会社の利用規約に基づいて処分すること
の2つです。
また、購入した複合機の処理方法は、以下の3パターンがあります。
1.購入したメーカーに有料で回収してもらう方法
各メーカーの回収費用は、複合機の重量によって金額に違いがあるものの、回収費用の目安は1万〜5万円前後となるケースが多いようです。
2.リサイクルショップで売却する方法
メーカーから複合機を直接購入しておらず、購入店舗が回収しない場合におすすめです。引き取り条件は、問題なく稼働すること、購入から10年以内であることなどです。
3.産業廃棄物業者に依頼する方法
トラブルを避けるために以下のチェック項目をクリアした業者を探しましょう。
- 産業廃棄物処理の資格を持っている
- 費用が公開され、分かりやすい
- 廃棄物の処理方法が明確に提示されている
回収費用の目安は1万円前後になっており、近場の業者ほど安く回収してくれる傾向があります。
複合機の中古・リースの比較
中古購入とリース契約の違いを比較しました。お得に購入できる方法も合わせて紹介します。
中古やリースのメリット
中古購入とリース契約のそれぞれのメリットは以下のとおりです。
■中古購入のメリット
<新品の10分の1以下で購入できる>
中古購入は状態や型式などにこだわらない方におすすめ。新品価格が100万の複合機でも10万程度で購入できるため、導入費用を抑えられます。
<審査なしですぐに導入できる>
中古購入は、購入から納品までの時間がかからないのが魅力。リース契約は審査や在庫確認などにより、納品まで最短でも1週間ほどかかりますが、中古ならすぐに配送手配してくれます。
<所有権は自社にある>
リース契約とは違い購入するため、複合機の所有権は企業側にあります。処分時期の決定権があり、買い替え時には売却することも可能です。
<利用期間に制限がない>
故障するまで、あるいは欲しい新機種が発売されるまで使用し続けられるのがポイント。リース契約のように契約期間が終了して、返却や再契約する必要がありません。
■リース契約のメリット
<初期費用がかからない>
リースは高価格の複合機でも低い費用で使用できるのが魅力。導入時にかかる費用はリース会社が立て替えるため、企業側は3〜7年前後のリース契約期間中、低額の利用料を支払いながら利用できます。
<月々のリース料金を経費扱いにできる>
リース契約を結ぶと、減価償却の経費処理が不要になり、経費に計上できるため節税対策になるのがメリット。10万円以上の複合機でも固定資産税を払う必要がありません。
<新品の機種を安く導入できる>
リース契約では高価な新品機種を低額で使用することが可能です。さらに複合機のリース料率は2%前後となり、ローン利率と比べても安く設定されています。
補助金制度でもっとお得に
複合機の購入費に当てられる助成金や補助金、優遇税制を6つ紹介します。
<業務改善助成金>
支給金額は最大で600万円です。生産性の向上や労働能率アップを図るための施設投資に対して助成金が支給されます。
<働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)>
支給額は最大480万円です。生産性の向上や労働時間の短縮、年次有給休暇の取得促進などに取り組む中小企業に支給されます。
<中小企業経営強化税制>
最大10%の税額控除か即時償却かを選択できる制度。即時償却は取得年度の法人税の課税対象額を少なく抑えられるのがメリットです。
<ものづくり補助金>
支給金額は最大1億円です。中小企業が生産性向上のためにする設備投資にかかる費用を支援する補助金です。
<創造助成金(東京都のみ)>
最大400万円が支給される助成金です。助成率は対象となる経費の2/3となり、対象者は創業予定の方や創業5年未満の中小企業者等で要件を満たした方となります。
<IT導入補助金>
最大補助金は450万です。中小企業や小規模事業者が経営課題の解決のためにITツールを導入する資金を支援します。
まとめ
複合機は新品購入だけでなくリースや中古購入で手に入れる方法があります。
それぞれのメリットを企業で求める価値と照らし合わせて、複合機を選ぶ際の参考にしてくださいね。